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お知らせ

令和6年度茨城県いじめ問題対策連絡協議会

令和6年8月9日 お知らせ
日時 令和6年7月1日(月)13:30~15:30
場所 茨城県教育研修センター
出席者 学校関係、警察、法務、福祉等の31の関係機関及び団体等より32名

本協議会の概要

本協議会は「茨城県いじめ防止基本方針」に基づき、いじめの防止等に関係する機関及び団体が情報共有及び連携を図ることを目的として設置されました。平成26年7月に第1回が開催されて以来、今回で11回目の開催となりました。

会議冒頭において、本協議会の会長である県教育庁学校教育部の庄司一裕部長から挨拶がありました。概要は次のとおりです。

会長挨拶

いじめ防止対策推進法が平成25年に施行され10年以上が経過した。文部科学省によると、令和4年度のいじめ認知件数は過去最多である。これは各学校におけるいじめの積極的な認知が進んでいる証と捉えている。しかし、重大事態についても過去最多である。スマートフォンの普及によるSNS 上のいじめ等の多発が背景と考えられる。これらのいじめは被害が大きくなりやすく学校だけでは解決できない。まさに「社会総がかりでのいじめ対応」というものが強く求められている。昨年度12月から私立学校のいじめ対応に関する業務が県教委に移管されている。全国的にも数少ない事例であり、県全体でいじめ対応をしていくという姿勢の表れである。
当協議会は、いじめ防止対策推進法第14条に基づき、関係各機関の連携のため平成26 年から毎年開催している。令和2年に茨城県いじめの根絶を目指す条例が施行され、社会総がかりでいじめに向き合うことの重要性が改めて確認されている。 本日は「いじめの深刻化を防ぐ社会総がかりの取組」をテーマに、茨城県弁護士会及び教育庁の取組発表を行い、協議、共有する。引き続き全ての子どもたちが安全安心な学校生活を送れるよう、皆様のお力添えを賜ることを強く願う。

続いて、義務教育課と茨城県弁護士会の「取組発表」を実施しました。それぞれの取組発表について、各団体から質疑が行われ、いじめ問題への対策を様々な視点で話し合いました。

取組発表:義務教育課

文部科学省が行った問題行動等調査によると、令和4年度のいじめ認知件数が過去最多となり、本県でも過去3番目に多く、全国で6番目に位置した。認知件数が多い学校は教職員の目が行き届いていることを意味しており、逆に少ない学校は見逃しが心配される。認知件数は学校が真摯にいじめと向き合った結果であり、重大事態の増加は問題だが、認知件数の増加は必ずしも悪いことではない。
いじめられた生徒が相談できないケースが課題であり、それを解消するために「校内オンライン相談窓口」を推進して早期発見を目指している。また、授業などを通じて自己肯定感や自己有用感を育成し、自らの行動を決断し実行する力を獲得することを目指している。当課ではスクールカウンセラーやソーシャルワーカー、スクールロイヤー派遣事業を通じて学校や生徒にアドバイスし、相談窓口として子どもホットラインやいばらき子どもSNS相談を周知している。
いじめ対応については、基本方針の共通理解と教育実践、組織的な対応、初期対応が重要であり、重大事態発生時には法や県のマニュアルに則って対応する。被害者が安心して登校できる環境づくりやSNSを介したトラブルの増加に対応するため、家庭でのルール作りをお願いしている。令和5年度末には「いばらき心の健康観察」を作成し、一人一台端末を活用して児童生徒の心や体調の変化を把握し、早期発見と支援を行っている。
今後も関係機関と連携し、県内の小中学校の児童生徒の笑顔のために取り組みを進めていく。

取組発表:茨城県弁護士会

以下の発表は弁護士会の公式見解ではなく私の個人的見解と考えてほしい。
昭和61年に文部省が出した最初のいじめの定義は、自分より弱い者に対する一方的な攻撃であり、学校としてその事実を確認しているものとされていた。しかし、現在のいじめ防止対策推進法の定義は、児童生徒に対して人的関係のある他の児童の行為によって被害児童が苦痛を感じていることとなっている。東京都教育委員会のいじめ総合対策では、継続性がない行為や偶発的な行為、謝罪などによってすぐに解決した行為も全ていじめに該当するとされている。文科省の調査によれば、小学4年生から6年生までの3年間で、多くの児童生徒がいじめの当事者になっていることがわかっている。いじめ「0」を目指す学校は、認知漏れがないかを確認する必要がある。
いじめ発生前の予防策として、「学校いじめ防止基本方針」の見直しと遵守が重要。学校で定めた基本方針が、先生方にとって理解し活用できるものであるかどうか、実態と基本方針が一致しているかを確認することが求められる。学校が自ら作った基本方針を守ることが最大の重大化予防策となる。形式的には「いじめ防止基本方針に則っていないかもしれないが実質的に丁寧に対応した」と言う先生がいるが、重大化した事案では通用しない。個人情報の観点からも、「丁寧な対応」と言うのは外部に説明することが難しい。
いじめが発生した後、どの段階で重大化するリスクがあるかについて、「相談」、「調査」、「認知」、「支援指導助言」、「解消」のどの段階でも問題が生じる可能性がある。例えば、「相談」では防止対策組織への情報共有不足、「調査」では被害児童生徒の意に反する調査、「認知」では非常識な事実認定が挙げられる。「認知」の段階でのミスは組織的な対応で防げる。「支援指導助言」の段階でも保護者の要望に対する対応方法が問題となることがあり、学校が自らの方針を持って対応することが重要。 いじめを指導する理由は、法令上のいじめにあたる行為を知ることで社会に出る前にどう対処するかを学ぶ機会となる。学校は生徒に対して「相手が嫌だと思ったらいじめだからやめなさい」というだけではなく、なぜそれがいじめなのかを理解させる必要がある。
最後に、不登校重大事態の暗数について。教育委員会に対して不登校の主たる原因を尋ねると、いじめが原因とされた数は0.2%から0.3%だが、児童生徒の回答では25%がいじめや嫌がらせが原因としている。茨城県の令和4年度の調査によれば、小中学校における1,000人当たりの不登校児童生徒数は39.7人で、全国トップだ。これをどう捉えるかが大切だ。

全体協議

全体協議においては、各委員からそれぞれの立場でいくつかの意見がありました。主な内容は次のとおりです。

  • いじめの認知件数が全国的に増加している中、本県でも同様の傾向が見られ、重大事態の件数も増加してきている。解消率を向上させることは重要だが、まずは重大事態を防ぐ取り組みが必要である。
  • 「解消」を急ぐことには慎重であるべきで、まずいじめ行為をやめさせることが最優先である。解消を急ぐあまり、形式的な解消が増加する恐れがあり、旭川の事例のように謝罪で解消とされ、その後問題が再発するケースもあるため、丁寧な対応が求められる。
  • いじめの認知に関しても、多数の生徒が関与した場合、いじめられている生徒が悪者にされることがある。教師が全体像を把握しきれず誤った認定をしてしまう可能性もあるため、適切な初期対応が必要である。
  • 解消の判断には、問題行動が止んでいるかどうかを3ヶ月間丁寧に確認していくことが重要で、転校や進級、教員の異動等があっても継続的なサポートが求められる。
  • 事例として、一度問題が収まった後でも不登校が続いている場合、本当に解消されたのか疑問が残る。本人や保護者の「大丈夫」という言葉をそのまま受け入れるのではなく、状況を確認し続けることが重要である。 学校側が不登校に対して丁寧に対応している場合でも、保護者が学校のいじめ認識に不満を抱くことがあり、認識のずれが問題を引き起こすことがある。
  • 中学校では校内「オンライン相談窓口」が100%設置されているが、高等学校の設置計画については今後の課題である。高校教育課では1人1台端末を活用し、SOSの早期発見に向けた取り組みが進められ、令和5年11月の調査では実施済みの学校が32%、検討中の学校が56%であると報告されている。
  • SNSでのいじめについても、子供が複数のアカウントを持つことが多く、教師がSNS上のいじめを発見するための研修なども重要である。学校では情報モラル教育を行い、家庭との協力を進め、使用ルールを設定する取り組みが行われている。SNS相談については、生徒の心理的な不安定さも影響し、ヒアリングにおいて注意が必要である。公認心理師などが相談に応じており、相談内容は秘匿されているため、安心して相談できる環境が整備されている。
  • 「子どもの人権SOSミニレター」の取り組みは、全国の小中学校を通じて児童生徒に配布されており、昨年度の県内相談件数の中で149件がこのレターによるもので、いじめに関する相談も存在する。
  • 学校では相談できない場合、外部機関への相談も考慮されている。いじめを根絶することは難しいが、早期発見と解消が重要であり、子どもたちが安心して学校に通える環境作りが大人の使命である。「オンライン相談窓口」の設置により相談件数は増加しており、早期発見に寄与している。相談内容を秘密にしつつ適切に対応することが求められる。
  • 教職員はいじめに関する法令や対応の流れを理解する必要があり、研修を通じて教育相談の進め方を共有することが重要である。特に若手教員は経験が不足しているので、研修やオンザジョブトレーニングを通じてスキルを向上させる必要がある。
  • 市町村ではスクールロイヤーの導入が増えている。毎年、教職員向けにスクールロイヤーを招いた研修会を開催し、いじめ問題への法的対応について再確認することは重要。特に、人権教育を含む法的な研修が必要である。さらに、警察との連携も重要で、学校と警察の連絡協議会でもいじめ問題に関する相談が増えている現状がある。
  • 研修センターでは、教員が保護者や児童生徒と面談する際の具体的な事例を用いた研修会を実施している。研修内容には、ロールプレイを通じて言葉の使い方や席の座り方、対面・斜めの位置関係などが含まれており、特に初任者や中堅教員に向けて、効果的な聞き方や間の取り方について具体的に指導している。今年度の問題行動等調査の方法が変更され、不登校について先ほど話があった「暗数」に関して関心を持っており、学校現場での適切な対応が求められていると考える。

協議会の最後に庄司会長よりまとめの挨拶がありました。概要は次のとおりです。

庄司会長まとめ

本日は二つの取り組み発表があったが、どちらもいじめの重大化深刻化を防ぐことがテーマだった。義務教育課からは、いじめ防止のための初期対応の重要性と即時対応の必要性が強調され、茨城県弁護士会からは、いじめの法律的な広がりと重大化を防ぐための具体的なミスについてそれぞれの段階に分けての説明があった。また、学校や教育委員会と児童生徒の間での不登校のきっかけについての認識のずれも取り上げられ、これについても考察があった。さらに、「茨城県いじめの根絶を目指す条例」の「いじめをしない、させない、許さない」という厳しい姿勢について、思いやりのある心を育て、多様性を認める社会作りが重要だと考える。私見ではあるが、昨今の大人の自己中心的な言動が児童生徒に与える影響についても懸念され、相手の心情に軸を置いたコミュニケーションの重要性を感じている。授業での指導はもちろん、大人の見守りの中での注意が必要だ。今回の協議会は非常に有意義であり、今後も学校、家庭、地域社会が強固に連携していじめ問題に取り組んでいくことが重要だ。今後ともどうぞよろしくお願いします。

茨城県では、いじめの防止と早期発見・早期解消に向け、関係機関及び団体はもとより、県民の皆様と力を合わせて社会総がかりで取り組んでまいります。

 

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