いばらきの文化財

県指定 有形文化財 古文書

税所文書(山戸本)

さいしょもんじょ(やまとぼん)

大洗町

本文書は常陸国在庁官人として土豪化した税所家(さいしょけ)に伝来した史料群です。「税所」とは、古代律令国家の地方支配の拠点であった国衙(こくが)機構に置かれた徴税を行う機関名でしたが、それが、職務を世襲化した一族の名字と化し、常陸国においては百済氏が「税所」を名乗るようになりました。
「税所文書」は、文化4(1807)年、水戸藩士の立原翠軒が、税所家から借り受けた文書を、史料の散逸を防ぐため、概ね年代順に文書を配列貼付し、折帖3帖に仕立て返納したもので、「山戸本」は、そのうちの第2帖、第3帖に当たります(第1帖は石岡市の個人が所有し、平成27年1月に県有形文化財に指定されています)。第2帖には南北朝期~戦国期の中世文書50点(近世文書1点を含む)、第3帖には近世文書36点、計86点の文書が所収されています。
第2帖には、徴税方法についての具体的なあり方を示す文書が多く所収されており、そこからは、在庁官人の系譜を引く税所氏が、鎌倉・南北朝期を経て室町期に至っても、徴税に関与していた実態を具体的に知ることができます。また、第3帖には、江戸前期以降の税所氏の様子を示す文書が所収されており、屋敷・土地に関わる文書や由緒書・系図・過去帳写などにより、江戸期における税所家の存在形態が窺えます。
税所家の古代以来の家の継承に関しては、様々な状況があったと思われますが、古代末から中世にかけて税所氏を名乗り、関係の古文書を伝来させたことは高い評価に値し、また、税所家の江戸期の姿を知ることができる点も貴重です。律令官人の系譜を引く家が江戸期に至るまで継承された例は珍しく、鎌倉期から南北朝期にかけての中世文書19点を所収した第1帖と合わせ、翠軒が年代順に整理した一連の文書群は、国衙の在庁官人家に伝来した文書として、全国的にも稀有な第一級の史料です。

第2帖 大宮司中臣則道書状 (写真提供 茨城県立歴史館)

第3帖 税所家由緒書写 (写真提供 茨城県立歴史館)

税所文書(山戸本)

第2帖 50点、第3帖 36点
指定年月日 令和5年12月28日
所在地 水戸市緑町2丁目1番15号(茨城県立歴史館寄託)
管理者 個人
制作時期 第2帖 南北朝期から戦国期(一部江戸期)、 第3帖 江戸期