いばらきの文化財

県指定 有形文化財 彫刻

木造 聖観音菩薩立像

もくぞう しょうかんのんぼさつりゅうぞう

稲敷市

榧(かや)材、寄木造、彫眼で、現状は古色(こしょく)です。
神宮寺(じんぐうじ)は満願開創の寺伝をもつ天台宗の古刹で、現在、須弥壇(しゅみだん)上本尊厨子横に安置される等身の像です。垂髻(すいけい)を結い、前面天冠台上に花形の宝冠をいただき、条帛(じょうはく)、天衣(てんい)をかけ、裙(くん)、腰布をまとい、左手は屈臂(くっぴ)して蓮華(後補)を執り、右手は垂下して掌を前にし、腰をやや左に捻って立つ聖観音菩薩像です。構造は頭・体部とも両耳後ろを通る線で前後二材矧付け(はぎづけ)、内刳(うちぐり)を施し、三道(さんどう)下で割首(わりくび)しています。両肩、左臂、右肩下り外側部、両手首、両足先などを矧ぎ付けています。
像容はやや長めの大振りの面相に、伏し目がちの両眼を表わす温和な顔立ち、撫肩で奥行の浅い体軀(たいく)、穏やかな衣文(えもん)の彫り口など、平安時代後半の定朝様(じょうちょうよう)の作風に倣(なら)ったものです。関東では安元2年(1176)造立の埼玉・西光院(さいこういん)阿弥陀三尊像の脇侍などに近く、本像の制作年代も平安時代末、12世紀後半と考えられます。特に、奥行が浅い体ながら、その正面観は太身で、全体に大らかな気分が伺えるところなどは、当地方のこの時代の特色を示し、茨城県に遺る藤原彫刻のなかでは重要な作例といえます。

木造 聖観音菩薩立像

1躯
指定年月日 平成17年11月25日
所在地 稲敷市神宮寺146番地
管理者 神宮寺
制作時期 平安時代末(12世紀後半)