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いばらきの文化財

県指定 有形文化財 工芸品

鰐口 如意寺、嘉暦三年在銘 1口

わにぐちにょいじ かりゃくさんねんざいめい

水戸市

元如意輪寺(にょいりんじ)に伝来したもので鋳銅製、両面とも甲盛りは低く扁平です。中央に円形素文(えんけいそもん)の撞座(つきざ)を据(す)え、その外側に一条と三条の圏線(けんせん)をめぐらし、縁にも三条の紐(ひも)をつくっています。
肩は厚く角が張り、中央の鎬(しのぎ)も高く、両肩左右の耳は小形の丸形に鋳出し、目は大きく出てこれも形は丸形、口・唇は厚く唇先は角張るがその出は耳・目に対して小さくなっています。
総体に肩の厚さと肉厚が目立ち、堂々たる趣があって、簡素ながら年紀と即応する鎌倉時代の制作です。
鋳技(ちゅうぎ)の点でも前後の合せ型が鋳造時にずれ、肩部分にはバリと湯流れが残り、目の先端も鏨(たがね)仕上げを行っていないなど、素文(そもん)の撞座の形式とともに鋳放し(いばなし)に近い豪放さがみられます。
表面外区(がいく)の上部中央と左右周りに、宍戸荘如意寺(ししどしょうにょいじ)の地名・寺名と嘉暦3年(1328)陰暦4月18日の年紀を含む42字を鐫刻(せんこく)していますが、文字の輪郭には鏨(たがね)によるメクレが認められます。
県内に遺る作例としては正嘉元年(1257)銘の小美玉市上玉里大宮神社鰐口に次ぐ古例で、鎌倉時代の数少ない基準作例として、また「鰐口」という呼称が銘記中にある点も資料的に貴重です。
(注)「鰐口」という呼称の銘記上の初見例は、正応6年(1293)銘、宮城県大高山神社の鰐口(昭和43年、重要文化財)です。

鰐口 如意寺、嘉暦三年在銘 1口

1口
寸法 総径33.5cm、面径28.5cm、総厚12.3cm、肩厚5.5cm、撞座径(つきざけい)6.6cm
指定年月日 昭和16年1月8日
所在地 水戸市緑町2丁目1番15号
管理者 茨城県立歴史館
制作時期 鎌倉時代