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いばらきの文化財

県指定 有形文化財 工芸品

葆光彩磁葡萄紋様花瓶 板谷波山作

ほこうさいじぶどうもんようかびんいたやはざんさく

笠間市

板谷波山(1872~1963)は、茨城県真壁郡下館町(現筑西市)に生まれた陶芸家です。東京美術学校(現東京芸術大学)彫刻科卒で、金沢の石川県工業学校(現石川県立工業高等学校)で彫刻を教えましたが、のち陶磁科を担当して陶芸の道に入りました。
この作品は、純白の肌に葡萄唐草文様(ぶどうからくさもんよう)が薄い絹地を被せたような潤いのある葆光釉(ほこうゆう)の下で淡い微妙な色あいで浮かび上がっています。
葡萄の実は淡紅色から紫に、葉は緑と青を合わせたような光を放って、その美しさは器の内面からにじみ出るかのようです。釉調(ゆうちょう)といい、意匠(いしょう)といい、小品ながら波山葆光彩磁の傑作の一つといえよう。
出光(いでみつ)美術館には「大正七年八月七日案/釉は葆光」と記したこの作品の図案が所蔵されています(板谷波山素描集『模様集巻三』)。本作品の名称と制作年代は箱書(はこがき)によっています。
なお、葆光とは光沢をかくすこと、物の線や界をやわらかく薄く表すことをいいます。波山の葆光彩磁は、彩磁における透明釉のかわりに薄絹を透かして見るような失透性(しっとうせい)の釉をかけたものです。葆光釉は、長石(ちょうせき)や石灰のほかに炭酸マグネシウムも加え、波山の『釉薬調合帳』によると、焼成温度に関しては「1230度位にてマット釉となる」などの記載がみえます。

葆光彩磁葡萄紋様花瓶 板谷波山作

1口
寸法 高さ13.9cm、口径10.3cm、胴径21.6cm、底径9.0cm
指定年月日 平成16年11月25日
所在地 笠間市笠間2345番地
管理者 茨城県陶芸美術館
制作時期 大正11年