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いばらきの文化財

県指定 有形文化財 工芸品

氷華磁仙桃文花瓶 板谷波山作

ひょうかじせんとうもんかびん いたやはざんさく

笠間市

高さ約45cmにおよぶ堂々たる大花瓶で、胴部上半に大きく仙桃文、胴部下部に蓮弁文(れんべんもん)を、それぞれ鋭い薄肉彫り(うすにくぼり)の彫文様(ほりもんよう)で配する作品です。このような文様構成は、中国宋代の耀州窯(ようしゅうよう)、磁州窯(じしゅうよう)、景徳鎮窯(けいとくちんよう)などの花瓶や壺に共通するものです。これは大正後期以来の波山における中国古陶磁研究の成果としてつくられた様式ですが、一方、その豊かな膨らみをもった器形や端正な彫文様には、近寄りがたいほどの研ぎ澄まされた作行が示されています。波山の確固とした個性を充分に見せるもので、大きさばかりでなく、彫文様の見事さなど波山氷華磁における傑作の一つに数えられます。
福岡県北九州市の個人が旧蔵していたもので、波山の大コレクターとして知られる出光美術館の創設者出光佐三(いでみつ さぞう)は、この家と交流があり、この作品を見た時の感動の深さが、のちの波山コレクションを形成する契機となったことが知られています。
なお、波山の氷華磁とは白い素地に透明釉(とうめいゆう)をかけたいわゆる白磁で焼成(しょうせい)は還元焔(かんげんえん)で、釉(うわぐすり)はやや青味を帯びており、表面には貫入(かんにゅう)が入っています。波山の白磁では、およそマット調ならば葆光白磁(ほこうはくじ)、透明釉ならば氷華磁と箱書(はこがき)されています。氷華磁は、波山の昭和初期を代表する作風の一つです。

氷華磁仙桃文花瓶 板谷波山作

1口
寸法 高さ43.3cm、口径20.0cm、胴径39.5cm、底径22.0cm
指定年月日 平成16年11月25日
所在地 笠間市笠間2345番地
管理者 茨城県陶芸美術館
制作時期 大正15年